「俺、お前と別れるつもりでいる。もう終わりにしよう」

そう言い、立ち上がろうとする彼を「待って！」と慌てて引き止めた。別れる？終わりにする？訳がわからない。

「何で？何で別れるの？私、悪いところがあったなら直すから……」

そう必死で言う私を、彼は面倒くさそうに見つめる。否、睨んでいるの方が正しいかもしれない。大げさなため息をつかれた。

「他に好きな女ができた。ただそれだけ。お前、つまんねぇんだよ」

彼はそう言い、私のことを振り向きもせずにドーナツ屋さんを出て行く。残された私は、手元に残ったドーナツを見つめた。もう食べる気なんてない。あれだけおいしいと思っていたのに、今はまるで砂や泥を食べているみたいで……。

「……何で……」

胸に、ポッカリと穴が開く。それはまるでドーナツの穴みたい。穴を穴だけ切り取ることはできない。でもその穴は、彼がいた証。ただ虚しいだけ。

自分の何がいけなかったのか、わからない。彼の好みを勉強して、メイクも何もかも頑張ってきた。彼の隣にいても許されるように、努力を惜しんだ日はないはずだったのに……。