「真由ちゃんだろ。千佳の友達の」

 千佳となんとなく似ているその顔で、人懐こい笑顔を振りまかれると違和感なく受け入れてしまう。

 明彦は千佳とそんなに背丈は変わらず、男の子にしては小柄で幼い感じがした。

 千佳が男っぽいだけに、ニコニコしている明彦は中性的な優しさが漂っているように思えた。

「あっ、明彦…… 君、だっけ?」

 隣で拓登がじっと見ていた視線に明彦は敏感に反応する。

「ごめん、なんか邪魔した感じだったね。千佳と同じ制服だったから、つい見てたら真由ちゃんだって思ってさ気軽に声かけちゃった。昨日初めて会ったけど、千佳からいつも話聞いてるから、もう友達のような気がしてしまって」

 私は拓登にクラスの友達の双子の弟と強調して明彦を紹介し、明彦にも同じように拓登を紹介した。

「その制服は……」

 拓登がそういいかけたとき、瑛太と同じ制服といいたかったのだろうと察した。

「そうなの、明彦君は瑛太と同じ学校」

 私が瑛太の名前を出すや否や、待ってましたのように最悪な状況に陥ってしまった。

「おいおい、俺のいないところで、勝手に俺の話するなよ」

 人で溢れている通路に突然降って湧いたかのように瑛太が現れた。

「瑛太! なんであんたがここにいるのよ」

「なんだよ、人を突然出てきたゴキブリみたいに扱いやがって。俺だって本ぐらい買いにくるわ」 

 瑛太は本屋のロゴがついたビニール袋を提げていた。

 本当に本を買いに来ていたみたいだった。

「まあ、ここで会ったのも何かの縁なのかもしれないな。どうだいこれから皆でお茶でも飲みに行こうか」

 拓登に視線を一瞬向けた後、白い歯をニカッと出して私に言う。

 なんで瑛太とお茶を飲まないといけないのかと露骨に嫌な顔になってしまう。

 すぐさま断ろうとしたとき、明彦が一早く声を出した。