「あのさ、瑛太のことだけど、さっきの話はどういう意味?」

「さっきの話?」

「ほら、瑛太が私に何かを伝えたがってるって事」

「ああ、あれか。別に深い意味はないんだけど、瑛太が真由に伝えたかった長年の思いを急に言いたくなったとかさ」

 さらりと答えが返ってきた。

 さっきは言っていいものか迷っていたように見えただけに、なんだか違和感を覚えた。

 こんな事をいうつもりではなかったのではないか。

 確かあの時は私の知らない事を知っていて、それを伝えようとしていると言ったはず。

 瑛太が伝えたいことは自分の気持ちではなくて、他に何かあるような感じにとれた。

 言葉の綾による私の考えすぎだろうか。

 私は拓登をつい訝しんでじっと見つめていた。

「どうしたんだい? 急に僕を見つめてくれて」

「えっ、その、もちろん約束を守るためじゃない。真剣に見るって約束したでしょ」

 良く考えれば色々と誤魔化すには、その言葉はとても都合のいい言い回しではある。

「あっ、そうだった。自分で言っときながら、間抜けな質問してしまった。ごめん。で、何か僕について感じ取ったことあった?」

 とっさに上手く返したつもりだったが、またそれを拓登に上手く返されてしまった。

「えっと、そうだね、少しずつ拓登の事が分かってくるような感じかな」

「例えば?」

「えっ、その、話しやすいところとか、親しみやすいところ」

「親しみやすいか……」

 拓登はとりあえずは満足したのか、ニコッと微笑んでくれた。

 でもすぐ真顔になるとまた質問してきた。

「じゃあ、僕と瑛太とどっちが親しみやすい?」

 そんなの拓登の方に決まってる。

「比べる方が間違ってるよ。瑛太は失礼だし、嫌がることするし、何を考えてるかわからない。拓登もそう思うでしょ」

「それもそうなんだけど、油断したらペースに巻き込まれるから、困る人なのは確か。それにやっぱり真由とキスした話は許せない」

 またキスの事を穿り返されて、今度は私が慌ててしまった。

「だから、あれは」

「わかってるって。済んでしまったことだし、真由にもいい迷惑だった」

 拓登は悔しがるように少し俯き加減になっていた。