「ううん、なんでもない。応援ありがとう。でも、時々僕に応援のメールとか送ってくれない?」

「メール? うん、いいけど。どうしたの? 何か試験とか試合とかあって気合を入れたいの?」

「ちょっとね。まあ、僕の拘りなんだけど。僕は頑張れっていう言葉で頑張ってきたんだ。その言葉が好きで、ちょっと真由に言って貰いたかっただけ」

「私でお役に立てるなら、いつでも頑張れっていうけど」

 拓登は照れた風に笑っていたけど、ふと前を見据えた目がどこか寂しそうに遠くを見つめているようだった。

 なぜか拓登には陰りが見えて、時々変な行動をするだけに、不思議だなと思う時がある。

 そんな憂いな表情も様になってるだけにかっこいいとは思うが、そういうところも含めて真剣に見て欲しいと思っているのだろうか。

「どうしたの。僕をじっと見て」

「えっ、だって、真剣に見るって約束したから」

 私もここは拓登の言葉を借りて言ってみた。

「そうだった。じゃあ、僕をしっかり見て」

 またまじかに顔を寄せてくる。

 一瞬びっくりして仰け反りそうになったけど、ここは踏ん張ってみた。

 なんだかにらめっこしてる気分だった。

「ねぇ、もし僕が真由の頬にキスしたらどう思う?」

「えっ!」

 一体何を言い出すのかと思って、驚きすぎて咄嗟に身を引いてしまった。

「やっぱりダメか」

 妙に拓登ががっかりしていた。

 それよりも、顔を近寄せて頬にキスとか言われたらびっくりするとか思わないのだろうか。

 ドキドキと心臓が口から飛び出そうだった。