雨の滴と恋の雫とエトセトラ


 下駄箱に向かうと、外で背中を向けてる拓登がいた。

 俯き加減で手元が動いているところをみると、スマホを操作している様子だった。

 その時は気にも留めず、急いで靴に履き替えて、拓登の側に行く。

「お待たせ」

 その言葉は自然と出てきたように思う。

 少しずつだが、拓登に慣れてきて無理なく自分らしさが出てきた感じだった。

 拓登はスマホをすぐに片付けて、そして私に微笑みかけてくれた。

 拓登の隣に肩を並べて、というより、拓登の方が背が高いので肩と頭を並べてという感じかもしれないが、私達は恥ずかしがることなく一緒に歩いた。

 朝、瑛太と出会ったことを話してくるかもと思っていたが、拓登はそれには一切触れなかった。

 私に心配を掛けないためにわざと言わないのかもしれない。

 私としては、二人は混み合った電車の中でどうしていたのか知りたかったけど、それを訊いてしまえば、私が朝同じ時間にホームにいた事がばれてしまう。

 見てみぬふりしただけに、自分からは決して振れない話題だった。

「真由は高校生活を楽しんでる?」

「うん、なんとか。いい友達もできたし……」

 ここで拓登と知り合った事も付け足したいが、ちょっとまだ恥ずかしく口に出せなかった。

 拓登と顔を合わせ、とりあえずは目で表現しようと意味ありげに笑ってみた。

 通じたか通じてないか分からないが、同じように笑顔が返ってきた。

 その後は日々感じていることをさらっと言ってみた。

「でも授業が結構早く進むような気がして、ついていけるか少し心配」

「そうだよね。それは僕も思う。だけど受かったんだからやっていかなくっちゃね。ここに来たくても落ちちゃった人もいるから、恵まれてる分やらないと勿体無いよね」

「勿体ないか。そうだね。まさに無駄にできないって思えてくるね。それじゃ私も頑張らないと」

 拓登は大きく頷いて同意する。

 そしてぱっと閃いたように突然目を見開いた。