周りの女生徒たちも驚いて私と山之内君を交互に見ていたが、名前を呼ばれた私ですら、何事かと椅子に座って暫く固まったままきょとんとしていた。

「倉持さん?」

 すぐに反応しない私に落ち着かなかったのか、山之内君は確かめるようにもう一度私の名前を呼んだ。

 その時の山之内君の目はずっと私を捉えていた。

 帰る準備をしていた女子達もじっとその状況を見ていた。

 側にいた友達がいち早く状況を察知して、気を利かして背中を押される感じで私は立ち上がったが、机の脚に躓いてはよたつきながら山之内君の側に向かった。

「あの、何か?」

「雨が降ってるね」

「はい、そうですね……?」

「一緒に帰ろう」

「はい?」

「もしかして、何か用事があった?」

「いえ、べ、別に用事はないですけど」

「だったら、一緒に帰ろう」


 この状況はなんだろう。

 山之内君はいつ私の名前を調べたのだろう。

 傘を貸した事を覚えていて、あの時家の表札をみたのだろうか。