雨の滴と恋の雫とエトセトラ


 朝は充分な時間がなかったし、どんどんクラスの生徒が登校してきて聞かれてもこまるから、詳しいことは話せなかったが、とりあえずはあの帰りに二人と駅で出会った事を話した。

 こういう話は聞く方にとっては面白いのか、好奇心一杯に瞳をランランとさせて私の言葉をフンフンと聞いていた。

 二人が言い争って、それでエスカレートして拓登から真剣に考えて欲しいというところまでは話したが、担任の先生がやってきたところで、残りは放課後ということになった。

 私ばかりが恋の相談するなんていいのだろうかと思いつつ、拓登の話題だけに皆は好奇心を持って聞きたがるから困惑する。

 まあいいかとそこは臨機応変に構えることにした。

 授業が始まれば、そんなことも気にならなくなって、ノートをとることに必死になる。

 結構授業の進み方が早いのは、すでに大学受験を視野にいれてるからだろうか。

 まだ高校に入学して間もないが、ここに入ったからには多少の努力はしないとついていけないと困ってしまう。

 もしかしたら拓登もそういう事を見込んで、あまり恋に現を抜かすことを避けたいのかもしれない。

 中間テストもそんなに遠くないし、私も浮かれている場合ではないと、必死に手を動かしていた。

 休み時間、トイレに行くときだけ廊下に出たが、拓登とは偶然出会うことはなかった。

 教室にいるのか確認してみたいけど、私が露骨に覗いたらそれこそを噂の元になり益々何を言われるか分からない。

 一組の教室は見ないでおこうと意識をすればするほど、とてもぎこちなく首までが固定されて動かなくなってしまった。

 そして放課後、話の続きを聞きたいと三人が寄ってくるが、その時「真由!」と教室のドアの方から声が聞こえてきた。

 まさに、ピキッと電流が走るほどにびっくりしてしまった。

 拓登がそこに立ってるし、堂々とみんなの前で私の名前を呼び捨てにしたことに誰もが振り向いて驚いた。

 私は何かを隠したい気分でさっと立ち上がり、拓登の前にさささと走り寄った。

「はい、な、何? どうしたの?」

 周りの目が自分に突き刺さっているのが肌で感じ取れる。

 拓登の腕を咄嗟に取って廊下の窓際に無意識に引っ張ってしまった。