雨の滴と恋の雫とエトセトラ

 よく考えたらまだ何一つ拓登の事を知らなかった。

 恋っていうのはよく知らない相手でも一瞬にして火がついて好きになるものなのだろうか。

 私はこの方、本気で人を好きになった事がなかった。

 いいなって思う人は結構いたけど、クラスが変わったらすぐに忘れていった。

 中学のとき、付き合ってと言われたこともあったけど、あの時は全く興味がなくて全部断ってしまった。

 それから、告白された人とは廊下であってもギクシャクしてしまって、気まずい思いをしたものだった。

 拓登はまだ付き合って欲しいとも、好きだともはっきりとは言ってない。

 『真剣に僕を見て欲しい』

 私に好きになって欲しいと催促していても、その前に自分の気持ちを伝えてくれたほうが私は答えが出しやすかった。

 拓登は万が一私が迷惑に思うと感じて予防線をとったのだろうか。

 普通、好きだと告白してからそういう言葉が出てくるものなのに、私に拓登の何を見て欲しいというのだろう。

 充分カッコイイし、性格も良さそうだし、真面目そうだし、他に見るところがあるのだろうか。

「ちょっと、倉持さん、聞いてるの? もったいぶってくれちゃってさ」

「えっ?」

「だから、少しくらい二人の仲を教えてくれてもいいじゃない」

 そうだった、今、逸美にしつこく問い詰められているところだった。
 
 私が困っているそのとき、かの子と千佳が教室に入ってきて、私の側にきてくれた。