雨の滴と恋の雫とエトセトラ


 翌朝、拓登とかち合わない確立を高くしようと、いつもよりもかなり早く家を出ることにした。

 今まで朝、特に出会うことはなかったが、距離が縮まったとたんに拓登が時間を合わせることも考えられる。

 避ける必要はないのに、学校の中ではあまり目立ちたくないという防御が働いてしまう。

 いきなり拓登と仲良くなってしまったところを見られたら、必ず付き合ってるのとか噂が立つのも早い。

 付き合ってるわけではないけど、真剣に拓登の事を考えると言っている手前、これは付き合うことを前提としているということだろうか。

 自分でも訳がわかってないので、拓登との関係が第三者達によってあまりややこしくならないようにしたい。

 私も、拓登がかっこいいからとか、人気があるからとか、そういうミーハーな気持ちで付き合いたいとは思わない。

 今は友達としてお互いを尊重しあってよく考えてから…… などと色々並べたくっているうち自分でも何を言ってるかわからなくなってきた。

 結局は、拓登が気になったのはミーハー的な気持ちからだったと思うとなんか矛盾している。

 そう思うと、自分らしくないその姿にプライドが働いて、すごく嫌な気分になってくる。

 私はその辺の軽い女の子達とは違うんだという、見栄や矜持が、一人の男の子を好きになることで打ちのめされてもやもやと心の中で葛藤してしまう。

 そこが鼻にかけてるといわれる高飛車な態度なのかもしれないが、私も譲れない強情さがあるだけに、素直に認められなかった。

 自分を守りたいバリヤーと女心が複雑に絡み合う。

 そんな思春期の恋なんて、ただややこしい限りのものだった。

 駅についたとき、朝早くから出勤する会社勤めのスーツを着た人が一杯溢れかえっていた。

 私と同じように制服を着た学生もたくさん来ている。

 いつもの光景だが、そんな早朝の混み合った駅のホームに降り立った時、自分と同じモスグリーンの制服を着ている人を見てしまった。

 そしてその隣にはどこかで見た青いブレザーの制服を着ている人もいた。

 一瞬、ん? となったが、見分けがつくなりびっくりして声を出しそうになって思わず手で押さえ込む。