雨の滴と恋の雫とエトセトラ

「真由、ありがとう。僕は苗字よりも名前で呼ばれる方が好きなんだ。日本の習慣って、尊重する癖がついてるから、さんとか君とかまどろっこしいよね。真由の前だけでも、僕は素のままの自分でありたい」

 早速自分の名前も呼び捨てになった。

 名前を呼ばれるだけでもドキッとするのに、またさらりとドキドキするような事を言ってくれて、私はどう対応していいのかわからない。

 傘を貸してからとんでもない方向に行っている。

 真由って呼ばれるだけで、かなり昔から親しかったような錯覚を感じてしまうから、私もこの状況に酔いしれそう。

「真由、携帯かスマホ持ってる?」

 高校に入学したお祝いにと父からスマートフォーンをプレゼントされた。

 まだ使い方に慣れてないので使いこなせてないが、鞄からそっと出して見せた。

 山之内君、いや、もう拓登と呼んだ方がいいのだろうか。

 拓登はデニムのシャツの胸ポケットから同じようにスマートフォーンを出した。

 そうなるとやることは一つだった。

 お互いの電話番号とメールアドレスを交換する。

 名前を呼び捨てにしてからまたどんどんと進んで行く。

「よし、これでOK」

 OKという言い方も、非常に奇麗な発音に聞こえてかっこよさが引き立っていた。

 私はまた拓登をみていた。