雨の滴と恋の雫とエトセトラ

「僕さ、今はちょっと訳があって、はっきりと倉持さんに言えないんだけど、僕の希望としては倉持さんに僕の事を見て欲しいんだ」

「はい?」

 今のどういう意味? なんだかまわりくどくてわからない。

「だから、なんていうのか。その、僕のこと真剣に考えてみて欲しいんだ。倉持さんのこと、僕はやっぱり気になるし、それに傘を貸してもらったとき、すごく 嬉しかったんだ。でも倉持さんは僕のこと忘れてたみたいで、学校で会っても見て見ぬふりだったから、僕、さすがにちょっとショックだった。僕は倉持さんに気に入ってもらえるような男じゃないかもしれないけど、でももしかしたら望みがあるかもしれないし、とにかく僕のこと真剣に考えてみてくれない?」

「えっ?」

 辺りはかなり暗くなっていた。

 駅の近くだから、駅から漏れる光が仄かに辺りを照らしているが、その時の山之内君の瞳は闇と混ざってまどろんで優しく私を見ていた。

 その眼差しは充分私をドキドキさせたけど、これって山之内君は私のこと好きって言う意味なんだろうか。

 言葉が良く理解できないせいで、ドキドキと疑問が一緒になって頭に浮かんだ疑問符もそれに合わせてチカチカと点滅しているような気分だった。

「山之内君、それって」

「なんだか卑怯な言い方でごめん。でもはっきりと気持ちを伝える言葉はまだ早いと思うんだ。僕はやっぱり倉持さんが僕をどう思うか、ちゃんと明確にしてから言いたいんだ」

 言うって何を私に言うんだろう。

 それって、もしかしてやっぱり愛の告白?

 やっぱり今この場ではっきりと言ってもらわないと私もどう答えていいかわからない。