雨の滴と恋の雫とエトセトラ

 瑛太が出てきたことも、またその瑛太が引っ掻き回したことも、その原因が全くわからないだけに、降って湧いたような出来事だった。

 ただでさえ、山之内君と接点を持ってしまって、学校の女の子から色々と言われているのに、高校始まって早々落ち着かない。

「山之内君はとばっちり受けただけだから。謝る必要なんてない。だけどなんで瑛太は急に私に絡んできたんだろう。ほんとにわからないの。瑛太とは小学一年以降、全然接触したことなんてなかった」

「でも小学一年の時、瑛太とは仲がよかったの? その、頬にキスまでされてさ……」

 山之内君はなんだか言い難そうにしながらも、目だけは私の様子を伺うようにしっかりと見つめていた。

「ちょ、ちょっと待って。あのね、その話なんだけど、実は、昨日まで私も記憶があやふやで、そういう事があったかもくらいにしか覚えてなかったの。だから、その時の相手が瑛太だって知ったのは昨日瑛太自身から聞いたからなの。そんなの言われなければ、ほんとに誰だかわからなかった」

「覚えてなかった? でも瑛太は覚えてたんだ」

「まあ、そういうのはやった本人は覚えてるもんだと思うけど、された方はなんだか分からなかった」

 なんで私はこんな事を山之内君に言わなければならないのだろう。

 全く山之内君には関係のない話なのに。

 山之内君は少し俯いて、そして何かを考えているようだった。

 そして決心したかのように顔を上げて私をみつめる。