雨の滴と恋の雫とエトセトラ

 あんなに粋がって山之内君をあざけるようにからかっていたというのに、一瞬で表情が凍りついたように硬くなっている。

「どうせ、俺は真由たちと違ってレベルの落ちる高校に通ってますよ」

 意外にも学歴コンプレックスを持っていた。

「別に、そういう事を言ってるんじゃないわよ。ただ全く関係がないのに割り込んで事をややこしくしているって言ってるだけじゃない」

 暫く私と瑛太は挑むようにお互いを牽制しあっていた。

 それに折れるように瑛太は大きく息を吐いた。

「はいはい。分かりましたよ。今日のところは暗くなってきたこともあるし、俺も腹が減ったから帰ることにする。この続きはまた後で」

「ちょっと、なんで続かなくっちゃいけないのよ」

「そうだ、今度三人でどこかへ遊びにいかないか。まずはお互いの事を良く知ってから、今後の事を決める」

「はい? どうしてそうなるのよ。からかうのもいい加減にして。さっきからいってるでしょ、瑛太とは全く関係がないって」

「ううん、もう俺はこれで関係を持ったよ。この拓登が現れてから、それは避けられないのさ。俺はとことん真由と拓登に付き纏うよ。もう誰も俺を止められないぜ」

 開き直って、どや顔を見せ付けてくるから、益々腹立たしい。

 瑛太は一体何を考えているのだろうか。

 その後手を振りながら、のうのうとして投げやりに歩いていった。

 私は暫く暗闇にとけこんでいく瑛太の背中をみていたが、はっとして山之内君に首を向けた。

「ごめんね。なんかややこしいことになって」

「別に倉持さんが謝ることじゃない。僕が悪いんだ」

「えっ、どうしてそうなるの。山之内君はただ巻き込まれただけだし」

「僕が瑛太の挑発に乗ったから、よけいにややこしくなった。ずっと黙っておけばよかった。ほんとごめん」

 私はこの時、状況をよく飲み込めていなかった。