「もちろんそうだ。真由は自分の気持ちのままに行動すればいいだけ。こればかりは他人は口挟むことじゃないからね。でも、真由はすでに山之内君に恋してると思うよ。それを認めるのが怖いだけさ」

「えっ?」

 千佳の言葉にはっとさせられた。

「もういいじゃん。これ以上真由をいじめるのはやめよう。ここは真由の味方にならなくっちゃ」

 千佳は私の肩を抱いて、励ましてくれている。

 なんて男前な。

 そんな言葉がほんとに良く似合う。

 ヒロヤさんの前ではかわいらしく、女の子しているそのギャップが千佳をとても魅力ある女の子にしているように思えた。

 髪が短いから少年っぽいけど、こんなショートの髪型がきりっと似合うのは元がいいからだと思う。

「千佳も頑張ってよ。私応援してるから」

 千佳は笑っていたけど、どこか目が寂しそうに陰りを帯びていた。

 伝わらないもどかしい気持ちを抱えた恋する女の子の目だった。

 こうやって女の子達だけで、恋の話をするのはやっぱり楽しいひと時だった。

 それは皆も感じていたことなのか、より一層私達の友情が強まったような気がする。

 後は、そこに実った恋があれば、本当に充実した高校生活になるのだろうか。

 山之内君と一緒に帰ったときの事を思い出してしまう。

 やはりドキドキとしてそれが新鮮で快感でもあった。

 この日も一緒に帰ろうと誘ってくれたけど、女友達を優先したものの、あの時彼が何を私に話したかったのかとても気になってしまった。

 それぞれの路線に向かうために皆と別れ、暫く一人で電車に揺られて自分の駅に着けば、空は陽が大きく傾いて、セピア色の優しい夕暮れ時だった。

 一日の終わりを感じながら、一緒に降りてきた人たちに混じって改札口を目指していた。

 何も考えず慣れた動作で定期を改札口にかざして、駅の外に出た。

「倉持さん」

 またそこで自分の名前が呼ばれたように思った。

 顔をあげると、日が暮れていく黄昏の中、私服姿の山之内君が自転車を手にして立っていた。