雨の滴と恋の雫とエトセトラ

 私は一人取り残され、すでに雨はやんでいるのに、いつまでも傘を差していた。

 頭の中はただこんがらがるばかり。

 山之内君に誘われて、ドキドキとしながら帰ってきたら、今度は池谷君が現れて付き纏われ、そして頬にキスされた。

 混乱を招いている中、一つだけはっきりしたのは、過去のあの出来事が実際に起こったことで、その犯人が池谷君だったこと。

 それでも、今更そんなこと言われても、やはり困惑の何ものでもなかった。

 私は力果てて倒れそうになるくらい、フラフラとしながら歩いていた。

 雨が止んで、空が明るくなりだし、それでもまだ傘をさしたままだった。

 傘に日が当たると透けて見えるが、そこにいくつもの水滴が影を作って、水玉模様に見えた。

 陽の光にはっとして、傘を閉じれば、雨の雫が下に向かって流れて行く。

 ぽたぽたと傘の先から落ちるのを見れば、自分もなんだか泣きたくなってくるようだった。

 泣くほどのことではないが、この日の事をまた忘れたいと強く思う。

 しかし、山之内君に声を掛けられて一緒に帰ってきたことまで忘れるのは少し勿体無かった。

 なぜそう思うのか。