雨の滴と恋の雫とエトセトラ

 そして思い出したように、思いっきり「えー」っと嫌悪感タップリに声を上げてしまった。

「あっ、もしかしてそのことは覚えていてくれた? 小学一年生の時、雨の日に俺がキスしたこと」

「うそ、あの時、私にキスしたのって、池谷君だったの?」

「うん。そうそう。俺!」

 ニコニコとした笑顔を池谷君は振りまいていた。

 曖昧だったあの時の記憶はやはり本当に起こったことだった。

 今まで誰にも話した事がなく、私しか知りようのない過去の記憶を、池谷君も知っている。

 それはまぎれもなく、池谷君が真実を述べているということだった。

 私は言葉を失い、口を開けてただ驚いた顔を池谷君に向けていた。

「俺たち、結構昔からすごい仲だったってことさ」

 胸を張って、口元をかすかに上向きにして、堂々と言い切っている。

 かっこつけていうような台詞か。