雨の滴と恋の雫とエトセトラ

「ラッキーなことに雨も止んだし、傘返すよ。ありがとうな。俺、こっちだから」

 開いたままの傘を私に押し付け、池谷君は右の道を指差していた。

「そうそう、折角知り合ったから、山之内君とやらに今度三人で遊ぼうぜって、宜しく言っておいて」

 自分の冗談を楽しんでいる軽いノリで、息が漏れるようないたずらな笑いを添えていた。

「なんで池谷君が入って、一緒に遊ばなくちゃならないのよ」

「遊びがダメなら、勉強でいいや。二人とも頭がいいんだから色々教えてもらえると嬉しいぜ」

 その時一瞬見せた思いっきり笑う表情は、小学生の時の面影を思い出したような気になった。

 私は肩で傘を支えながら池谷君をじっとみていた。

「そういえば、なんか思い出すな」

「何をよ」

 池谷君が面白そうにクククと笑う。

 何がおかしいのかと首を傾げていたその時、不意をついて池谷君が腰を屈めて私に近づいてきた。

 その後は一瞬の出来事で私を覆っていた傘の中に顔を突っ込み、私の頬に軽く彼の唇が触れた。