雨の滴と恋の雫とエトセトラ

 それから暫くは言葉なく、黙って歩いていた。

 雨は細い糸を散りばめるくらいに弱くなっていた。

 私の家まであと少しのところでふと気がついた。

「池谷君の家ってこっちだったの?」

「うーん、ちょっと遠回りなんだけど、こっちからでも帰れないことはないから」

「それって、私の家がどこにあるか知っててわざとこっち歩いてたってこと? なんで私の家知ってるのよ」

「ふふーん。なんでだろうね。結構俺、倉持のこと知ってるぜ。よく図書館に通ってることや、近所のスーパーに買い物いくこととか」

「ちょっと待ってよ。それってもしかしてストーカーしてるの?」

「ストーカー? そういう訳じゃないけど、良く見かけるってことさ。あっ、もしかして、俺が倉持に惚れてるって思った?」

 私は答えに詰まった。

 自惚れていたわけではないが、突然声を掛けられ、相合傘まで無理やりされて、自分の情報を知られているとなると、普通そう考えてしまう。

 顔を歪めてはいたが、私は何も言えなかった。