雨の滴と恋の雫とエトセトラ

 同じ駅で降りた沢山の人たちに紛れて、私達も改札口を出ていく。

 駅周辺は少し広々とした空間に、石でできたベンチが数個ポツポツと置いてある。

 正面は大通りに続く道が伸び、その左右には小さなお店が並んでいる。

 こじんまりとはしているが、町の玄関ともいえる賑やかさは少し備えていた。

「僕の家はこっちの方なんだ。ここまで自転車で通ってる」

 私とは反対方向を指差していた。

 駅のすぐ隣にある駐輪所に山之内君は自転車を預けている。

 ここまで自転車で通っているところを見ると、結構駅から遠い感じがした。

 私は徒歩10分くらいなので、いつも歩いてこれる。

「雨の日は、自転車だと大変だね」

「まあね。多少濡れても気にしないけど、よほどの雨のときは母に車で送り迎えしてもらうよ。さすがにずぶぬれになったら困るからね」

 私と家が反対方向と知ったその時、ふと私はなぜ山之内君が自分の家の近所を歩いていたのか気になった。

「そういえばあの時、どこへ行くつもりだったの?」

「えっ、あの時?」

「私の家の前で会った時」

「ああ、あれは、その……」

 山之内君は言うのを躊躇っている感じだったが、その時後から「よぉっ」と馴れ馴れしく誰かが声を掛けてきた。

 その声に咄嗟に反応して、私が振り返ると、見たことのあるような男の子がニタニタとしたわざとらしい笑顔を見せて立っていた。