雨の滴と恋の雫とエトセトラ

 その前髪を指先で少しはらい、山之内君は前方の窓から見える景色を見つめながら言った。

「この辺りは、新しいビルやマンションが建ってるね。昔はもっと寂れて田舎っぽかったのに」

「あれ、山之内君ってこの辺りに詳しい人なんだ」

「そんなに詳しくもないけど」

「でも私の近所には最近引っ越してきたんでしょ」

「どうして? なぜそう思う?」

「だって、昔から近所に住んでたら小学校や中学校は同じだったと思うから」

「僕の家は昔からずっと倉持さんと同じ町にあるけど」

「あれ、そしたら学校は私立かどこか違うところだったの?」

「まあ、そういう事になるのかな」

 山之内君は何気に視線を私からそらし、窓からの流れる景色をじっと見つめていた。