雨の滴と恋の雫とエトセトラ

 揉めていたのも束の間、そのうち楽しくなって、私たちは子供の頃に戻ったように無邪気に戯れだす。

 そこには瑛太を責めるという気持ちはとうになくなっていた。

 ただ追いかけて、逃げるという行為が面白く私たちは意味もなく鬼ごっこをしていた。

 そうやってふざけているうちに雨脚が弱まって、空が段々と明るくなってきた。

 この後の連休は晴れるのかもしれない。

 でも別に雨が降っても構わない。

 降ったところでいつかは止むものだ。

 それに拓登と一緒にいれば、湿った天気でも楽しく過ごせそう。

 雨が降れば、ほっぺのキスの事を一緒に思い出し、やがてドキドキに繋がることだろう。

 今はちょっと正直舞い上がってる。

 だって気分が高まって楽しいからついつい羽目を外したくなってしまう。

 それは素直に受け入れ、その一方でここまでの事を振り返る。

 自分を見つめ直すきっかけにもなった一騒動。

 腹を立てたり、意地を張ったりしたけれど、よく事情を知らずに自分よがりになりすぎた。

 時には思うままに感情をぶつけて分かり合うってこともあるけども、もっと落ち着いて考える癖をつけなくっちゃ。

 しっかりしようと思うんだけど、拓登を見るとやっぱり顔が緩んでしまう。

「おい、真由、何をひとりでにやついてるんだよ」

 瑛太がまた私にちょっかいかけてきた。

 この先もきっとそれは変わらずに憎まれ口を叩くのだろう。

「別にいいじゃない。瑛太には関係ないでしょ」

 そして私は傘を閉じ、それを揺らして雨の滴を瑛太めがけて思いっきり蹴散らした。

 瑛太はそれを笑って受け止めていた。


《了》