雨の滴と恋の雫とエトセトラ

 架線からは雨の滴が休むことなく滴り、しとしとと降る静かな雨の音が聞こえてくるようだった。

 電車の案内をするアナウンス、そして軽やかなリズムを持ったメロディが流れると、周りの乗客たちは乗り込む準備に入ってそわそわと動き出した。

 私も「電車がきたね」と山之内君と顔を合わせた。

 山之内君は静かに口元を上向きにして愛想良く応えてくれた。

 電車がホームに到着しドアが開くとまばらに客が降りて、その後を山之内君が先に乗った。

 私は山之内君の少し濡れた肩を見つつ、ついていった。

 暫くしてドアは閉まり電車がゆっくりと動き出す。

 毎日乗っている電車だと言うのに、この日は違ったものに見えてしまうから不思議だった。

 電車の中は学生と一般客が交じり合って、そこそこ混み合っていた。

 座るところがなかったので、私達はつり革を持って並んで立っていた。

 濡れた傘を誰もが持ってるせいで、電車の床は傘から垂れる雨の滴で濡れている。

 人も持ち物も雨で湿っぽくなっていた。

 山之内君の前髪も、少し濡れているが、こういうのは雨に滴るいい男というのだろうか。