雨の滴と恋の雫とエトセトラ

 時々視界に入ってくる、傘を持つ山之内君の手。

 握った時に浮き出てくる骨がゴツゴツしていたのが男っぽく感じてしまう。

 山之内君のペースに乗せられ、目にする光景全てに意識しすぎて、私の中の感情も高まって行く。

 雨もそれに合わせて激しく降っては、心乱れるように傘から滴がどんどん落ちていった。

 駅の中に入ると、私の傘をしぼめ、そして返してくれた。

「こうでもしないと、倉持さんと近づけないような気がしたんだ。そんなに僕のこと敬遠しないで欲しいな」

 私は傘についた雫を控えめに落としながら、傘を纏めていく。

「敬遠してないけど、初めて話すからその、どうしていいのかわからなくて」

「初めて? えっ、そんなことないだろ。全く知らない仲じゃないじゃないか」

 傘を貸したときに言葉を交わしたけど、あれくらいではやっぱり知らない仲だと私は思っていた。

「倉持さん、僕の顔をしっかり見て」

 山之内君は腰を曲げて私の顔のまじかによってきた。

「ちょ、ちょっと近づきすぎ」

 思わず仰け反ってしまったが、山之内君はちょっと困った顔をしていた。