一番印象に残ってるのは、担任の先生が事故にあって落ち着かなかったことだった。

 初めて聞いた時、事故っていうだけで先生が死んじゃったと思ってすごくショックを感じた。

 あの時は皆混乱して、クラスは一時応急処置でバラバラになってしまって、その後で急遽代わりの先生が来たんだった。

 その先生が結構きつい人で好きじゃなかったけど、今となっては嫌な印象だけ残ってて名前も顔も覚えてない。

 その後で事故に遭った担任が戻ってきてやっと元に戻ったんだった。

 それくらいしか覚えてないかな。

 私は暫くぼーっとしながら過去の事を考えていた。

 今まで昔の事を思い出すということをしなかったから、無理に過去に自分を向かわすことで集中し周りの世界と一時切り離された気分だった。

 その時にまたふと新たに過去の記憶が戻った。

 そういえば、三学期が終わる頃に授業で手紙を書く練習をしたことがあった。

 あれは隣の席の子に宛てたんだっけ。

 あの時、何を書いたか内容は忘れたけど、私は確かに書いて渡したというのには確信があった。

 でも、自分が相手からの手紙を受け取った記憶がない。

 それはただ忘れているから思い出せないのではなくて、本当に手にしなかったことを覚えていた。

 なぜなら、すごくその手紙が欲しかったから。

 確かその隣の席に座っていた男の子がなんとなく好きだったんだと思う。

 周りの子は上手く交換してたのに、なんで自分だけもらえなかったのが不思議で、どこかにないかランドセルの中や手提げ袋、机の中を何度も見て確かめたほどだった。

 結局はあやふやになってしまって、もういいかと諦めてしまった。

 そんなことを思い出しているうちに、ふと気がついた。

 阿部君も小学校一年の時同じクラスだった。

 私はアルバムをもう一度見て、阿部君の顔をじっとみていた。

 利発そうで、上品に笑っている。
 
 何かが思い出せそうで思い出せないそんな感覚に囚われ、これは是非とも会って話を聞かなくてはならないと感じ、連絡する事を決心した。