雨の滴と恋の雫とエトセトラ

「それじゃ、私達も帰りますか。じゃあね、瑛太」

「真由、ちょっと待てよ」

「ん? どうしたの?」

「なんか、今日は色々とごめんな。俺、気まぐれだから真由には迷惑だろうけど、でも俺は俺だから仕方ないんだ」

 私が素直に礼を言ったことで、瑛太もどこかで心が軟化したのかもしれない。

「なんだか瑛太じゃないみたい。急に改まるなんてびっくりするじゃないの。それに、瑛太の気まぐれなところは、なんか慣れてきたよ。でも受け入れたわけじゃないからね。どうせまたこれからもネチネチと絡んでくるつもりでしょ」

「おっ、やっぱりそう思うか。その通りさ。それじゃしっかりと覚悟しておいてくれよ」

「覚悟するも何も、そっちこそ、気をつけるのね」

 瑛太は無邪気に笑い出した。

 その笑顔は棘が取れたみたいに、優しいものだった。

「いい顔して笑うじゃないの」

「おっ、俺に惚れ直した?」

「最初から、惚れてませんから」

「そっか、やっぱり拓登が好きなのか。悔しいけど、こればっかりは仕方がないな」

「やっと、諦めてくれますか」

「いや、別に諦めたわけではないよ。この先も出来る限り邪魔はするから覚悟しとけ。やっぱり癪じゃないか」

「瑛太!」

「それじゃ、またな」

 瑛太はその後、走って帰っていった。

 呆れてその姿を見ていると、一度振り返り、そして手を思いっきり振って去っていった。

 そんな瑛太の無邪気な様子は不思議と嫌いではなかった。

 どこかで瑛太との距離が縮まって行くようなそんな錯覚にみまわれた。

 でもそれは友達として楽しい仲間という感覚だった。

 千佳が言った言葉が思い出される。