雨の滴と恋の雫とエトセトラ

「あのさ、あの池谷君だけどさ、あの子さ結構いい子なんじゃないの」

「えっ、やだ、千佳がそんなこというなんて、私ショック」

「だって、明彦のことすごく理解してくれてるし、明彦があそこまで心開くのはすごく珍しいんだ。今までヒロヤさんしかそういうことしなかったんだ。自分の ことはあまり言いたがらないのに、池谷君には女装のことも早くから話してるみたいだし、だから今日堂々とあんな格好して来たんだよ」

「それは同じ学校で友達同士だからでしょ。私の目から見たら瑛太はもうしつこいし、意地悪ばかりしてくるんだけど」

「真由にだけはそうみたいだよね。男の子は昔から好きな女の子の気を引くためにわざと嫌な事をするとかはいうけどさ、池谷君は真由が絡まなければすごくいい奴そうにみえるんだけど……」

「やだ、千佳やめてよ。千佳までそんなこと言ったら、私がそういう原因を作ってるみたい」

「案外とそうかもよ。真由、もっとよく池谷君を見てみたら? きっと真由の知らない事がありそうだよ。分かり合えたら、真由と池谷君ってすごく相性良さそうなんだけど」

 千佳は本質を見る目があるだけに、そんな事を言われると困る。

「私と瑛太が相性いいだなんて、なんでそう思うの? 一体何を感じ取ったの、千佳?」

「それは真由の問題になるから、自分で考えな。私がとやかく言えることじゃないから」

「千佳、教えてよ」

 何度と訊いても、千佳はそれ以上は何も言わなかった。

 物事の本質を見抜く目を持っている千佳には、瑛太はどう映ったのだろう。

 私は瑛太の背中をじっと見てしまった。