雨の滴と恋の雫とエトセトラ

「遅くなってごめん。混んでた」

「だから女は何かと面倒なんだよな」

 拓登と話していたときのしおらしい態度と打って変わって、瑛太がつっかかる。

 まるで八つ当たりされているようなものを感じた。

「だって、仕方ないじゃない。沢山いたんだもん。それより、二人で何を話してたの? 遠くからみたらなんか真剣そうだった」

「ああ、これからどこへ行こうかって。ちょっとお腹空いただろ。真由は何が食べたい?」

 拓登の答えはあの状況からみたら合ってないように思えた。

 どうみても、拓登が瑛太に怒っていたように思えたけど、でも私は別に何も言い返さずに「なんでもいい」と無難に答えていた。

「だったらさ、ヒロヤさんの店に行こうぜ」

 瑛太がニヤッとして答えた。

 すでに最初からそこへ行こうと思っているような顔だった。

 ヒロヤさんのお店は居心地がいいし、私もそれはいい案だと思ったので、そこはすんなりと賛成した。

 場所もそんなに離れてなかったし、私達はそこへ行く事がもう当たり前だというように足を向けた。

 だが、ついてから店のドアに「CLOSED」とサインが出ていて、私と拓登は顔を見合わせてがっかりした。

「そうよね、一人で切り盛りしてるし、平日開けてたら、日曜日は定休日でもおかしくないよね。なんで気がつかなかったんだろう」

 私がそういうと、瑛太はドアのガラスの部分に手と顔を近づけて、中を覗いていた。