雨の滴と恋の雫とエトセトラ


 トイレは少し混み合っていて、自分の順番が来るまで時間が掛かったが、私が再び二人のところに戻ろうとトイレから出た直後、前を見れば、二人は向かい合って何かをいい合っている様子だった。

 穏やかな拓登が瑛太にはっきりと何かを言っている感じに見えたのは、弱みを握られていたことがなくなったからだろう。

 それでも、あまり自分の事をいいたがらない拓登には、人から自分の話をされるのが嫌だったのかもしれない。

 だけど、真実が分かった今、これがしっかりと自分を見て欲しかった理由だったと思うと、拓登にしてみればどこかで人と違う自分に自信が持てないでいたのだろうか。

 そこに拘り過ぎて、まずは先入観のない目で自分を見て欲しかったから、私と接する時は変に回りくどくなっておかしくなっていた。

 また見せかけだけで寄って来る女の子達に対しては、自分のこともよく知らないのにという気持ちが強くなってしまったところもあったのだろう。

 海外で過ごしているだけに、日本人ばなれした自分に拓登もどこかで悩んでいた。

 その気持ちは私も理解できる。

 ただでさえ、高校生活が始まって不安もある中、これからを左右する人間関係を築くのに失敗する恐れと言うものもあるし、海外で過ごしただけで何を噂されるかもわからない。

 それだけ慎重になっていたということだった。

 これで拓登の問題は理解できたけど、瑛太がそれに気づいて、それを利用していたことは許せない。

 瑛太がそれを言い出したのは、私が騙されていたことにがっかりさせようと思ったのだろうか。

 もちろんびっくりはしたけど、それが原因で拓登を嫌うことにはならない。

 寧ろ、もっと深く拓登の気持ちが分かって却ってよかったくらいだった。

 誰しもどこかで心配事があればスパッと真実なんて語れない。

 でも、瑛太は一体何を考えているのか。

 ただ私と拓登の邪魔をしようとしているだけではなさそうな気がする。

 拓登に何か言われて瑛太がうな垂れているのをみると、何か瑛太にもトラウマ的な問題があるように思えてきた。

 それがあるから、刺激される度に何かがひっかかって、意地をはってしまうのではないだろうか。

 まだ私の知らない何かがある。

 そう思いながら私は二人に近づいた。