雨の滴と恋の雫とエトセトラ

「やっぱり俺のこと見下してるってことだな。別にいいけど、ちなみに拓登はすでに準一級もってるぜ」

「えっ? 準一?」

 拓登は嘘ついても仕方がないとここでも軽く首を縦に振って肯定した。

「なんだか私だけ取り残されてる」

 英語は得意だと思っていたが、拓登は帰国子女で仕方がないとしても、瑛太の英語力が私よりも上。

 あの時二級の対策本はやっぱり瑛太が目指していたものだった。

 私は急にしゅんとしてしまった。

「真由、どうしたんだい。これから頑張ればいいじゃないか。僕が手伝うから」

 拓登は気を遣ってくれるが、惨めさは拭えない

「うん、ありがとう」

 とりあえずお礼は言っておいたが、笑おうとして顔が引き攣っていたかもしれない。

 瑛太は私とは対照的で、立場が逆転したように堂々としている。

 私の惨めな気持ちがそう思わせたのかもしれないが、これはダメージが大きかった。

 でも瑛太はなんで急にこんな事を話したのだろう。

 瑛太に刃向かっていた私はすっかり意気消沈してしまい、完全にやりこまれた。

 その隣で、拓登は突然のことに、同じように腑に落ちない表情で瑛太をみている。

 だけどこれも、瑛太の思う壷の展開だとしたら、やっぱり瑛太は邪魔をしようとあれこれ攻撃していることになる。

 瑛太はザマーミロとでもいいたいのだろうか。

 ニタニタとした笑いがどこか不気味に思える。

 私の中で瑛太に対する見方が変わってしまった。

「あの、ちょっとトイレに行って来る」

 映画が終わったら行きたかったけど、違う意味で少し息をつきたかった。