雨の滴と恋の雫とエトセトラ


「映画中々面白かったじゃないか。久し振りに大画面で見て興奮した。いつもはDVD借りてくるんだけど、大きなスクリーンはやはり違うもんだ」

 瑛太は映画館を出た直後、ロビーに飾ってあったポスターの前で足を止めて拓登に語っていた。

 素直にその映画の内容が気に入った様子だった。

 私もそれなりに面白かったと思うけど、やっぱり自分から進んで観たいと思うような映画ではなかった。

 拓登もまだ余韻が残っているのか、映画の話題を瑛太に振られて「うんうん」と調子よく頷いている。

 その後はお互い印象に残ったシーンを話し出した。

 さすがそういう点では男同士の共通した感覚があるのだろう。

 拓登が私にも話を振ってくる。

 私には二人が言うほど感じられず、少し一歩引いて観ていたので、あまり自分の意見がいえなかった。

「悪くはなかった。でももう少し英語が理解できてたら、字幕スーパー読まないでもっと映画が楽しめたかも」

 拓登も同じように同調してくれるだろうと思ったが、拓登は私があまり映画を気に入らなかったと思ってしまった。

「今度は真由が観たい映画にしよう。無理につき合わせてごめん」

「違うの、これはこれでよかったよ。でもまた観に来れたらいいね」

 今度は瑛太抜きでと最後に付け足したかったくらいだった。

 私がそういうニュアンスをこめて瑛太をチラリと一瞥したとき、瑛太も当然分かっていたと思う。

 乾いたわざとらしい笑いが聞こえ、その後お返しに私を挑むように視線を向けた。

 そしてふっと息が漏れたと同時に、拓登に向き合った。