「もういい。それじゃ瑛太が決めたら! でしゃばってすみませんでした!」

 ヤケクソで謝ってしまった。

 それが余計に瑛太を喜ばせ、拓登を困惑させるというのに、私はどうしても賢く行動ができなかった。

「真由、僕こそごめん。ほんとにごめん」

 見かねた拓登が激しく謝り出す。

「拓登、落ち着けよ。そんなに謝ることないだろう」

 瑛太がなだめるように言っているが、それって本来なら私の台詞じゃないの。

 なんで瑛太が……

 なんかもう訳がわからないのと同時に、このまま瑛太に思うように操られるのも嫌だし、そして拓登に八つ当たってしまう自分も嫌だった。

 コメツキバッタのごとく、私に頭を下げてる拓登を見るのもつらい。

 かなりめちゃくちゃにかき回されて、瑛太の邪魔は確実に功を奏している。

「瑛太、わかった。瑛太の好きにして。一体何がしたいの?」

「なんだよ。急にしおらしくなって。まあ、そこまで言うのなら、映画観に行こうか」

「ちょっと、待ってよ」

 すたこらと瑛太は歩いて行くと私と拓登は追いかけるようについていってしまう。

 瑛太の勝手な行動で私達は振り回され、どっぷりと疲れてしまった。

 また言い返しそうになったけど、これが瑛太の作戦なんだと思うとぐっと堪えた。

 拓登と顔を見合わせて、苦笑いになりながらとにかく映画館へと足を運んだ。

「で、おたくら一体何を観る予定だったの?」

 映画館の周りを埋め尽くしている映画の看板やポスターを見ながら瑛太は聞いた。

 喋る元気もなく、拓登も私も一緒に映画のポスターを指差した。

「ふーん、ハリウッド映画らしい派手な感じだね。よし、いいじゃんこれで」

 結局は計画していた通りに事が進んだが、ここまで掻き回されると楽しみにしていた気分は疾うになくなっていた。

 せめて拓登の隣に座れますように。

 瑛太の邪魔が入ると思うと、今は座席のことで頭が一杯になり、瑛太との勝負だと気が焦っていた。