「あ、ああ、大丈夫」

 一体どうしたのだろう。

 全く何をするか読めない瑛太に拓登は振り回されて疲れたのだろうか。

 拓登もまた焦燥感にも似た、やつれた感じで落ち着きないように見えた。

 この先が思いやられる。

 だけど、瑛太は私が指摘したことで自分が意地悪をしていると自覚したのか、それから大人しくなったように思えた。

 それも映画館の前につくまでだったが、ここでまた一悶着があった。

「なんで、こんないい天気の時に、暗い場所で映画なんか見るんだよ。しかも混んでるし、いい席座れるかわからないのに」

「天気なんて映画観るのに関係ないでしょ。いつ観たっていいじゃない。それに私達は映画を観る約束してたんだから。そこに勝手に瑛太がついてきたんだから、文句いう資格なし」

 私が瑛太と向き合って人差し指を向けて派手に口論してしまった。

「真由、みんな見てるよ」

 拓登はおろおろとしている。

「ちょっと拓登も瑛太にしっかりと言ってよ。拓登が曖昧だから、瑛太は付け上がってくるんだから。拓登は私と映画行こうって誘ったんだよ。それなのに、どうして邪魔をする瑛太にガツンと言わないの?」

 拓登は何も言わずに黙ってるだけだったし、瑛太が勝手な事いっても腹も立てないのはおかしい。

 私も拓登に何か言わないと気がすまなくなってきた。

「あーあ、真由はやっぱり気が強い女だな。こんな公衆の面前で二人のイケメンにえらっそうに意見を言うって、すごい度胸」

「ちょっと、瑛太、話の論点がずれてるよ。それに、何がイケメンよ、関係ないでしょ。これは瑛太が勝手な行動をするからじゃない。瑛太がトラブルメーカーで一番悪い」

 余計な事を言うから、またイライラとしてしまう。

 もしかして、瑛太はわざと私をイライラさせて、その失態を拓登に見せようと企んでいるのだろうか。

 瑛太の顔を見れば、やはり楽しむようにニヤニヤと笑っていた。

 それでハッとしてしまった。

 私はまた乗せられて、瑛太の思う壺だったらしい。

 瑛太は邪魔をすると言っている以上、映画に行く事を否定する言葉が出てもおかしくない。

 なぜ気がつかなかったのだろう。

 お陰で、拓登も私が指摘したから、なんだかしゅんとして意気消沈している。

 ちょっと、なんかこれって私が大ピンチじゃないの。