電車の中は、家族連れや友達同士といった、普段通学しているときには見かけない集まりが乗っていた。

 行楽日和でもあるし、和気藹々とした雰囲気が漂ってくる。

 そんな中で拓登と瑛太が二人並んで立っていると結構目を惹くものがあった。

 やはり背が高くどちらもかっこいい分、サマになっている。

 若い女の子達は時々チラチラと二人を見てはこそこそと何か話している様子だった。

 そんな二人の側に立っている私はどんな風に見られているのだろうか。

 やっぱり羨ましいという感情があるかもしれない。

 落ち着かない気分で電車に揺られていると、瑛太が腰を屈めて耳元で囁いてくる。

「なんだか俺たち目立ってないか。ほら、俺がいることで役に立ってるじゃないか。真由はきっと両手に花を持ってるって思われてるぜ」

 私の心の中が読まれている。

 なんだか言い返すこともできずに、瑛太を見上げて焦ってしまう。

 ほんのちょっぴりでも、周りの女の子達の反応を見て、優越感に似たそんな気持ちを抱いたことに図星だった。

 瑛太は面食らった私の表情を愉快そうに笑っている。

 瑛太の悪ふざけに拓登は仕方がないと諦めたのか、ふーっとため息が小さく漏れ、黙って瑛太をみているだけだった。

 調子に乗った瑛太はまた言った。

「真由がどっちに気があるかなんて、皆想像してるのさ。どうだい、いい男を二人も側にはべらかしてる気分は。中々なんじゃないのか」

「どうして、瑛太はそう下世話な話しかできないの」

「だって、女なんてみんなそうだぜ。特にかっこいい男の前では自惚れや優越感をもってさ、計算して付き合うのさ」

「ちょっと待って、そういう人もいるかもしれないけど、一緒にしないでよ。勝手についてきたくせに」

「でも、真由の自尊心を大いに助長させてるだろ」

「だから決め付けないでっていってるでしょ。瑛太はすぐになんでもああだこうだって自分の意見だけで話を進めてしまう。あんなに私にちょっかい出してきた割に、なんだか瑛太って私の事嫌ってるみたい」

 瑛太はこの時、意外にも面食らった顔をしていた。