「よぉ、拓登。元気か」

 瑛太は私と拓登にヘラヘラとした笑みを見せて、悪びれることもなく、自分が一緒に居て当たり前のようにしていた。

 拓登の方がどうしていいか分からずに答えを求めるように私を見つめた。

「玄関開けたら、瑛太がいたの。そしたらついてきて」

 そのまま言うしかなかった。

「瑛太、一体どういうつもりだ」

「どういうつもりって、たまたま真由に会いに行っただけさ。別にいいじゃないか。どうせ知らない仲でもないだろ。一人くらい増えたって」

 拓登は信じられないと言いたげに呆れて瑛太を見ている。

 私もどうしていいのかわからず、拓登に全てを任そうと様子を見ていた。

 だが、拓登はそれ以上何も言わず思案している。

「俺がいれば何かの役に立つかもしれないしさ、三人で一緒に過ごしてみようぜ」

 一体何の役に立つというのか。

 瑛太は恣意的に言葉を操って、結局は溶け込んで行く。

 拓登も強くいいきれずに最後は「勝手にしろ」と投げやりになってしまった。

 私にとったら、一応デートでドキドキとワクワクの楽しいひと時を拓登と過ごしたかったのに、とんだ邪魔者のお陰でここは戦いの場になりそうだった。

 瑛太は確実に邪魔をするのがわかってるのに、はっきりと拒絶できない生やさしさが酷く恨めしい。

 ここで帰れと言った所で、瑛太は言うことなど聞かずにどこまでも後をついてくると想像できてしまうから、拓登も事を荒立てたくなかったかもしれないが、完全に瑛太に負けてしまった気分だった。

 こういうのも三角関係というのだろうか。

 それにしても瑛太の意地悪さに辟易する。

 こんな事をすれば、私は益々瑛太が嫌いになるというのに、これでは無駄な捨て身の攻撃にしか思えない。

 こうなったら私も戦うしかない。

 邪魔をされれば逆効果で燃えるということを分からせるのも一つの手だと思うようにした。

「拓登、仕方がない。早くいかないと上映時間に間に合わなくなってしまう」

 私は急かした。

 ここは映画の時間の方が大切だった。

 瑛太はニコニコとして私達の後ろをついてきた。