私はなんとか冷静を保とうと、息を何度も吸って吐いた。

 いつまでも突っ立っているわけにもいかないので、門を開けて瑛太を無視して駅に向かった。

「おいおい、露骨に無視するなよ。そりゃ、突然現れたのは驚かせたかもしれないけどさ」

 後から執拗に追いかけてくる瑛太は、はらってもはらっても寄ってくるハエのようだった。

 無視しきれずに私は振り返った。

「瑛太、一体私の家の前で何してたのよ」

「何って、真由に会いに来たんだけど」

「連絡もなく、いきなり来るなんてびっくりするじゃないの」

「なんで? 別にいいじゃん。それに連絡したところで真由は俺と素直に会うのかよ」

 会うわけがないといいきれるが、本人もそれが分かっているようだった。

 しかしこの不意打ちは、こんな日に限って特にこんなことされたら、テロ攻撃みたいなもので納得いかない。

 しかもなぜ都合よく私が出かける時に家の前に立ってたのかも不可解だった。

「とにかく、今日は忙しいの。とりあえず会えたんだから、これでいいでしょ。もう帰って」

「真由は相変わらずきついな。拓登の前ではかわいこぶちゃってさ」

「拓登の前でも私はこのままよ。ただ、瑛太が迷惑なことするから怒ってるだけでしょ」

「まあ、その怒り方からすると、これから拓登と一緒に出かけるんだろ」

 分かってるなら遠慮しろといいたかったが、邪魔をする宣言をされた後では「ぐぐぐ」と苛立つ唸り声になった。

 そのまま無視をして私は歩いた。

「じゃあ、俺の考えていることも分かってるな」

 瑛太はやはり容赦しなかった。

 これから一緒について来ることくらい私にも予測できる。

 敢えて気づいてないフリをしてみた。

「一体何をよ」

 瑛太は愉快そうに息が漏れるように「くくく」と笑っていた。

「真由、今日はいい天気じゃないか。どこへ行こうか、三人で」

 なんだか、石が頭上に落ちてきた気分だった。