そして玄関で靴を履いていると、下駄箱に引っ掛けてあった傘が目に入った。

 雨の心配は全くなかったが、雨が降ったからこういうことになっただけに、感慨深いものを感じていた。

 雨が出会わせてくれたと思うことがロマンティックにも感じる。

 この日は思いっきりの晴れだけど、雨の水滴の代わりに、キラキラとした恋の雫が降ってくるかもしれない。

 そんな楽しい時間を拓登と一緒に過ごせると胸を高鳴らせて、玄関のドアを開けた。

 その時、一瞬私は心臓が止まったかと思うほどびっくりしてしまった。

 なんと瑛太が家の前にいたからだった。

 私はすぐに玄関から出てドアを閉めた。

 万が一、母に瑛太を見られないようにとの対処だった。

 これは油断していたというのか、まさかの不意打ちに私は完全に慌ててしまう。

 いつもは偶然に他の場所で出会うだけでなのに、家の前で待ち伏せされてるなんて考えてもみなかった。

 しかも、拓登と一緒に出かけると約束した日に──。

「よっ!」

 瑛太は余裕の笑みで、馴れ馴れしく挨拶をする。