「そんなこと絶対ないから。私、瑛太のことなんとも思ってない。私も瑛太が一体何を考えているのかがわからないんだけど、きっと何か私の知らない原因があるんだと思う」

「そういえば、瑛太は何か隠してるって、朝言ってたね。それを探るんだっけ」

「そう。今、中学の時の友達にも訊いてるの。それが分かれば、瑛太はもう私にちょっかい出してこないような気がするの」

 拓登はこのとき黙り込んで前をじっと見ていた。

 何かを逡巡するように、葛藤しているようにも見える。

「真由、あのさ……」

「どうしたの?」

「あのさ、その…… えっと、今度の日曜日、暇?」

「えっ? うん、あいてるけど」

「だったら、映画行かない?」

「どうしたの、急に?」

「真由と一緒にどっか行きたいなって思って、ダメかな?」

「もちろん、OKだよ」

「よかった」

 拓登はほっと一息つくも、顔を上げて不安げに空を仰いでいた。

 映画に行こうと誘われたが、なんだかそれをいいたかったわけではなさそうだった。

 他に何か言いたい事があったのに、言えずに誤魔化したような気がした。

 拓登も時々よくわからなくなる。

 私は拓登のその横顔を見たあと、一緒に空を仰いでみた。

 その青空は、いつか崩れ梅雨が来るように、拓登と仲良くなれてもまだどこかで不安な要素をはらんでいるような気がするのは考えすぎだろうか。

 拓登とまた顔を合わせれば、お互いにこっと微笑む。

 ずっとこのまま楽しく過ごせたら。

 すっきりとした青い空をイメージした気持ちで私は拓登を見ていた。