雨の滴と恋の雫とエトセトラ

「私の情報網を甘く見てもらっては困りますよ。ワトソン君」

「ではお手並み拝見させていただきましょう。ホームズさん」

 二人で調子に乗って話していたら、急におかしくなって噴出してしまった。

 廊下で仲睦まじく話していると、やはりじろじろと見ている輩が沢山いた。

 私はもうそれもどうでもよくなった。

 人に何を思われてもいい。

 こうやって普通に拓登と話しているだけに過ぎない。

 これで文句でも言われたら、他の人も同じようにすればいいと返せばいいだけ。

 でもしたくてもできない人が殆どではあるかもしれない。

 私もついこの間まではそうだったから。

 あまり、大きな態度でいるのも余計に反感を買うのもわかってるから、とにかく普通にしていればいい。

 目の前の拓登も私が普通に話せば他の男の子となんら変わりはなかった。

 ただかっこいいのが眩しいけど。

 大人びた雰囲気がして、男らしいと思っていた拓登だったが、こうやって肩の力を抜いて話したとき、拓登の笑顔がとても身近なものに感じた。

 それは慣れたような親しみのあるものだった。

 拓登ってこういう顔してたっけ。

 どこか違った表情に見えるのは、自分の心の変化がそう見せているのかもしれない。

 拓登は私の顔を見て笑っている。

 拓登からしたら私はどのように見えるのだろう。

 昔から友達だったように接してくれる拓登の人懐こさが、このときとても心地よかった。

「拓登、また今日一緒に帰れる?」

 今度は自然と私の方から聞いていた。

「うん、もちろん」

 まずは友達からでいい。

 お互いの事を良く知らなければ何も始まらない。

 拓登もそういうつもりで、私に近づいたのだろう。

 そう思うと、拓登の今までの行動が意味を成すようで、納得した時、すっと気持ちが楽になっていった。