雨の滴と恋の雫とエトセトラ

「俺、完全に嫌われてしまったみたいだな。修復不可能か?」

 何を暢気にそんな事を私に聞く。

 『もちろんそうよ!』と返してやりたいが、その代わりに振り向いて思いっきりあっかんベーをしてやった。

「これ以上、真由が俺になびかないのだったらさ、俺、とことん真由と拓登の邪魔してやる」

 強気で睨んでいた私の顔が、一瞬で驚きの顔になり、瑛太の豹変に言葉を失った。

「だって、俺だけこんな辛い思いするなんて癪じゃないか」

 瑛太は意地悪く、片方の口元だけ上げた笑みを私に見せた。

 私に宣戦布告するかのごとく、いかにもそれは邪悪に次のステージへとレベルアップしたと見せ付けているようだった。

 自分が報われないからといって、その仕返しを私に向ける瑛太の気持ちが信じられない。

 動揺している私とは正反対に、瑛太は余裕を見せつけ堂々と私を見ていた。

 その様子はいかにも本気だと言わんばかりだった。

 その対決に瑛太は満足したのか、静かに踵を返し、私に背中を見せて元来た道を歩いていった。

 私は呆然として暫く瑛太の背中を突っ立って見ていた。

 瑛太とはどんどんこじれていき、何をしても裏目に出てしまうことが悔しかった。

 瑛太は一体何をするつもりなのだろうか。

 なんだか急に身震いがしてきて、怖くなってくる。

 私はスマホを取り出して、そして拓登に助けを求めるように拓登のメールアドレスを探した。