雨の滴と恋の雫とエトセトラ

「別に、君に僕の傘を貸したいとかそういう意味じゃないんだけど、雨が降ったから、僕のこと思い出してくれるかなって思って。だって、僕と会っても倉持さんは 全然反応がないからさ。なんかこっちが声掛け難くて。雨も降ったから、あの時の事思い出してくれるかなって思って、勇気を出してみた。あの時のお礼もちゃんといいたかった」

 こんな鬱陶しい雨の日ですら、それを吹き飛ばすくらいの爽やかな笑顔がどきっとした。

 まじかで見て気がついたが、背も高く、すらりとした姿が制服のブレザーを着こなしていた。

 男っぽいのに、それとは対照的に笑ったときの山之内君の顔はとても無邪気に見える。

 すごく親しみやすくて、ついじっと見てしまった。

「僕の顔になんかついてる?」

「えっ、いえ、その、笑顔が素敵だなって思って」

「はははは、嬉しいな。倉持さんにそんなこと言われて」

 今度は陽気に笑い出した。

 素直に褒め言葉を受け取って、物怖じせずに堂々とした態度だった。

 傘を貸したときは、おどおどとしているように見えたのは気のせいだったのだろうか。

 つい、山之内君のペースに乗せられてしまったが、ハッと周りをみたら、私達を見ている人たちが大勢いたことに驚いた。