雨の滴と恋の雫とエトセトラ


 黙っていたままなら、私も拓登のかっこよさと、一緒にいたら鼻が高いという優越感に魅せられたことが好きになった一番の理由だと思われてしまう。

 でも実際、なぜこんなにも拓登が気になってしまうのか。

 考えたら理由なんて分からなくなってしまった。

「どうしたんだい? やっぱり結局は顔なんだろ」

「違う! ただ一緒にいたらドキドキするし、話しやすいし、どこか親しみがあったから、それで……」

「なんか、真由らしくなく焦ってる感じがするぜ。真由もやっぱり普通の女の子だったんだ」

 瑛太は鼻で笑っていた。

 それがとてもカチンときてしまった。

「そうよ、普通の女の子で何が悪いの。好きになることに一々理由なんていらないわよ」 

「今度は開き直りか? それとも逆切れ? とりあえず落ち着いたらどうだ。とにかく、真由は拓登が好きって認めたな」

「あっ」

 瑛太にやられてしまった。

「でもさ、俺もまだまだ諦めないぜ。ドキドキして、話しやすくて、親しみがあることが好きになる条件なら、一応俺もクリアーしてるしな」

「どういう意味よ」

「だから、真由が俺を好きになるってことに決まってるじゃないか」

「ちょっと待って、まだしつこくそういうこと言うの? 私は瑛太にドキドキなんてしないし、ただ話をしているだけだし、親しみなんて感じてない」

「おいおい、真由は拓登に俺みたいに素で自分の思ったことぶつけられるのか? それって話しやすいってことだろ。それに昔から知ってるわけなんだから親しみももちろん含まれている」

「こじ付けもいいとこね。でもドキドキはしてないわよ」

 瑛太は笑っていた。

「じゃあ、ドキドキさせてやる」

 瑛太は突然私に抱きついて力強く抱きしめた。

「ちょっと、何すんのよ。こんなところでやめてよ」

 体の大きな瑛太に腕まで含んでがっしりと抱擁されると動くことができない。