雨の滴と恋の雫とエトセトラ

 瑛太は開き直って潔く嘘を認めたが、どこかまだ信用できない部分を感じてそれが100%本当の話だとは私は思えずにいた。

「それじゃ、私にキスをした男の子って誰なの?」

「本当に真由は覚えてないの? 同じクラスにいたんだぜ」

「瑛太のことですら、すっかり記憶から飛んでいたのに、小学一年のことなんて覚えてないわよ。嘘ついて私を騙そうとしてたんだから、お詫びに教えなさいよ」

「知ってどうすんだよ。わかったら、会いに行くのか?」

「別に会いに行くとかそういう問題じゃなくて、こうなったら真相を知りたいじゃない」

 瑛太はまた主導権を握ったように得意げに笑みを浮かべていた。

「そうだな、教えてやってもいいけど、条件がある」

「この場に及んで、まだ条件とかいうの?」

「ああ、その方が面白いじゃないか」

「で、どんな条件なのよ」

 バカバカしいと思いながらとりあえず訊いてみた。

「そのキスした奴の気持ちに応えてやる」

「えっ、なんでそうなるのよ。かなり昔のことなのよ」

「だって、可哀想じゃないか。あいつ、ものすごく真由の事好きだったんだぜ」

「だからといって、今も私のこと好きってことはないでしょ」

「それがさ、たまに会うんだけど、やっぱり好きみたいだぜ」

「瑛太の友達なの?」

「ああ、俺の親友さ」

「親友なのに、成りすまそうとしてたの?」

「親友のためにも、真由が覚えているか確認してやろうと思ったんだけどさ、俺にしてもチャンスだったって事だったし、嘘がばれた今じゃ、そいつにやっぱり 悪いなって思うから、こうやって頼んでるんじゃないか。どうだ? その条件飲んで見る? そしたら真相はすぐわかるぞ。その真実を知ったら、真由はどう思 うんだろうな」

 私は馬鹿らしくなって、瑛太を無視して歩き出した。

「おい、真由どうしたんだよ」