「霧島会長が、お前を指名してきた」

デスクで、午後の営業用資料を作成していると、営業成績1位の鹿瀬拓也に呼び出される。
「ちょっと来い」いつものクールさはなく苛立ちを隠そうともしない彼に、嫌な話だだとは思ったが、開口一番に言われた言葉に眉を寄せる。

「霧島会長って、鹿瀬さんが今営業に行かれてる。霧島コーポレーションの霧島会長ですか?」

相手が不機嫌だから、引きずられてこちらも不機嫌に言葉に棘が混じる。
会った事もない。

「女は良いよな」
それ以上言わないが、言いたいことはわかってる。
ー寝れば仕事が貰えて。
侮蔑を含んだ視線に一気に頭に血が上る。

パーン

いい音が響く。
他の誰にも言われても気にならなかった。でも、目標にしていた彼にそう思われていたのは我慢できなかった。

一礼して連れ込まれた会議室を出る。

席に付き早々に資料をまとめ上げると、さっさと営業に出る。