「これ」
そう言って渡されたのは、見慣れない茶色い枠で囲まれた記入済みの婚姻届。

なぜ、出したはずのこれが、ここにあるのだろう。

「出してないから」

なぜここにあるのかとたずれるとごく当たり前の答えが返ってくる。

「いつ出しに行こうか?」
週末にする?
再来週のいい夫婦の日でも良いね?
今からでもいいけど。

「そうじゃなくて・・・とりあえず、朝ごはんにしませんか?」

時計は10時少し前を指していた。

シャワーをして、朝ごはんの支度を済ませると朝ごはんというより昼ごはんと言った感じの時間だ。

頭を整理したかった。
これは怒るところだろうか?婚姻関係を理由にさんざん抱き潰された。当然、怒っても良いだろう。

でも、出されてもおかしくない状態で出さずにいてくれた事に感謝すべきな気もする。

どうして良いのかわからず、とりあえず、紙は私が預かることにして、問題を先送りにする。