ズルい。

いつもはあんなに、クールなのになんで今日だけこんなに甘いのだろう。
甘くて、甘過ぎて胸焼けしそう。
だから、辞めて欲しいと言ったら、怒られるだろうか?

「シャワーでいいか?」

現実に引き戻されて、ハタと気づく。
ここは、一応旦那様のお家。
今日は、お泊り決定らしい。
と言う事は・・・。

体温と心拍数が上がった。
心臓の打つ音が耳に響く。

「今日は、何もしないから、気にしないで入ってこい」
「はーい」

あからさまにほっとする綾香に苛立ちを隠せない。
昨日は結婚したことで舞い上がっていた。
この上なく幸せだと思った。
一緒にいたのが自分で良かった。

だまし討ちみたいな形で罪悪感がないと言えば嘘になるが、幸せの方が勝っている。

他に何も望まなかったはずなのに、彼女の心までも手に入れたいと思ってしまう自分は強欲だ。