「鹿瀬さん」

乱暴に顔を引き寄せられ、唇を奪われる。

「まだ、直らないんだね」

次は、舌も入れるよ。
と、囁かれて、顔を赤くし、鯉のように口をパクパクさせる私を愛おしそうに笑う。
拓也のその顔で、さらに顔が、熱を持つ。

「俺の顔が、好みってホント?」
「えっと、どーかな」

いたずらっ子のような目で見つめられて、あわてて視線を反らす。

エレベーターが、最上階に到着し、手を引かれ気づいたら、部屋にいた。

「美味しい」
飲むのがもったいないくらいいい香りの紅茶は、味もすごく良かった。

「それは良かった。いつか飲ませたいと思っていたんだ」
営業部で綾香の紅茶好きは有名だ。
相手先に行くと社長に紅茶をお土産に貰うくらいだ。

「どちらで買えるんですか?」
「秘密」

買って飲もうと思ったのに残念。
顔に出ていたのだろう。
「これれからは、毎日入れてやる」
吐息がかかるくらいにそう囁かれれば、囁かれた耳から全身に熱が広がる。