コーヒーを入れろとキッチンに追い立てられ、リビングを気にしながら、コーヒーを入れ始める。

急な来客時は、風呂場に隠せと私に教えたのは、母だ。

コーヒーの催促も私を追い出す口実。
私が、マンションを出るなり風呂場を空けて鹿瀬さんにご対面したらしい。

「お母さん、何しに来たの?」
「あぁ、もう良いのよ。お見合い相手一緒に選ぼうと思っただけだから」
「お見合いですか?」

心なしか室温が下がったような気がする。

「そうそう、この子親の贔屓目もあると思うんだけど、わりと美人じゃない?なのに彼氏の影もなくて、最近、いい感じの子がいるみたいだったんだけど、駄目になったみたいで」

「お見合い写真なんて撮った事ないじゃん」

どんどん不機嫌に、なる鹿瀬にビビりながら、話題を変える。

「成人式の写真があるでしょ」

成人式の写真はその為に撮るものよ。
と、主張される。

「ちょっと、それは詐欺じゃ・・・」

6年前の写真は、ダメだと思う。

「ちゃんと言ったのよ。それでも良いって言う人にしか渡してないもの」