一年生の頃、同じクラスだというのに全く話せなかった。話しかけたくても、言葉が出てこない。胸が苦しくて、でも織里奈の笑顔に癒されていた。

織里奈と話したのは、秋になったある日のことだった。教室で友達を待っていた俺に、織里奈が話しかけてくれたのだ。

些細な会話だったけど、やっと話せて俺は嬉しかった。でも、タイミング悪く俺のお腹が大きく鳴る。

「よかったら、これどうぞ」

恥ずかしさで顔を赤くしてお腹を押さえる俺に、織里奈は笑ってかばんの中からチョコレートを出した。普通の板チョコやコンビニなどで見かけたことのあるものではなかった。四角いサイコロのような形をしている。

「これは?」

一口食べると、ふわふわした食感とビターなクーベルチュールチョコレートの味がする。織里奈はニコリと笑った。

「これはギモーヴって言うの。ギモーヴはフランス語でマシュマロのこと。マシュマロのチョコレートがけ!」