いつもにこやかに私の前に表れる、その人。



聞こえてきた話の部分部分から、わかる限り私は知らない間にその人にどうも辛い思いをさせていたらしいことが分かった。



私はこの話を聞いた日からわざとその人に素っ気ない態度をとろうと心に決めた。



いっそのこと私を嫌いになってくれたら良い、その方がお互いに楽になれると勝手に思い込んだからだ。



その人のことをこれ以上傷つけることが嫌でもうここには来ないで欲しいと涙を流して何度もその人の前で頼んだけれど。



その人は「まだ、……反抗期が続いているみたいだね?」と余裕の表情で笑いながらさらっとかわす。



会いに来る度に、これでもかというぐらい冷たい態度で示す私。



急変した私の態度に少し驚くものの、しかしその人は全く逃げ腰にはならない。



私が色々と試行錯誤することを全く気にすら止めないで、その人は足繁く私の所へいつも変わらない優しい笑顔を浮かべて会いに来てくれる。



私は完全に根負けをした。



とてつもない敗北感を味わった。



この敗北感は、……初めてではないような気がしてきた。



でも、どうして初めてじゃないのかまでは、……思い出せなかった。