蓮くんが真剣な表情でボールを打っている間、私の心の中に小さな小悪魔が現れた。



その小悪魔は『ミスれ……、ミスればいいのに。次こそ、お願い、ミスれ!』と小憎たらしい顔をして叫ぶ。



しかし、蓮くんは全くのミスなし。



2ゲーム目の開始、次は私の番だ。



こんなこと未経験な私にとって正しいバッドの握り方すらわからない……、不利なのはわかっているが負けたくない、最後まで諦めたくない。



ピッチングマシンから発射されるボールは容赦ない、手加減なしだ。



高速でこっちに向かってくるボールが怖い。



バッドを振っても振っても空振りばかりが続いて、凄く悔しい。



負ける、このままじゃ負ける!



1ゲーム目完敗だった私は、2ゲーム目は絶対に気が抜けないのだ。



思ったよりもボールの速度が速すぎるのと恐怖心の両方でバッドに当てるタイミングを連続して逃す。



ああー、なんて私はみっともない姿なんだろう。



私はもう無理だと諦めかけた時「もう、なげだすの?ちょっと、早くねー……。ほらっ──、」と、蓮くんが私の背後から「ああ、あぁっ……足をもっと広く広げて。だから、違う違う、バッドの持ち方をもっとこう──」
と丁寧に指導し始める。



「……わからないよ、こんな場所に来たの、私は初めてだし……」



蓮くんが近い、二人の距離が凄く近い。